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東北まぐ35号 2014年6月

震災を経て原点に返った福島の農業のこれから、「石巻にダンスホールをつくろう。自分たちの手で」、三陸海岸で獲れたムラサキウニの瓶詰め【東北まぐ】

東北まぐ
阿武隈高地から太平洋に注ぎ込む夏井川流域の豊かな水田地帯。(福島県いわき市)
はじめに
 東北まぐは、震災以降の東北に生きる人たちの声を届けるメールマガジンです。そこに暮らす人たちの「ことば」を届けて、いまの東北に思いを馳せてもらえる事を願って2011年8月にスタートしました。幾度もの現地取材を経て、感じた事はただ一つ。一人でも多くの読者のみなさまが実際に東北の地を訪れて下さる事が、復興に向かう東北の大きな力になると確信しています。

 関心や疑問があれば、想像するだけでなくぜひ現地へ足を運んでほしいと思います。皆様が地元の美味しいものを食べ、そこに暮らす人々と言葉を交わし、震災以降の東北を生き抜く人々の生き様と知恵に触れて頂く事を願って、東北まぐ35号をお届けします。
(岸田浩和)
 
行ってきました東北
震災を経て原点に返った福島の農業のこれから
行ってきました東北
「ありがとうファーム」の現場責任者をつとめる筥崎晋さん、この田んぼから収穫したお米を、自身の店舗「やきとり大吉」で提供する計画の正木聡さん、筥崎さんへ農業指導を行う「ファーム白石」の白石長利さん
 
 真夏のような日ざしがふり注ぐ日曜日の朝。いわき市小川地区の水田に囲まれた一本道をすすむと、明るい歓声の響く田んぼがあらわれました。この日は「ありがとうファーム」の田んぼで体験田植えが行われていました。大人や子どもたち約20名が、横一列に並んで苗を植えていくなか、あちこちから「あっ、足抜けなーい!」「見て、見て。きれいにまっすぐ揃ってるよ!」と、楽しそうな声が聞こえてきます。田植えを企画した「ありがとうファーム」の現場責任者をつとめる筥崎晋さん、この田んぼから収穫したお米を、自身で運営する「やきとり大吉」で提供する計画の正木聡さん、筥崎さんへ農業のアドバイスをする「ファーム白石」の白石長利さんも一緒に、田植えをする姿が見えました。
 
 いわきで農業に携わる3名へ、それぞれの立場から震災以降の福島の農業の実態と課題、可能性についてお話を伺いました。農産物の情報開示の取り組み、増える耕作放棄地の現状、自然農法や顔の見える農業について、今号と次号の2回にわたってお届けします。

「原発事故をチャンスに変える、農業の発想」

 福島県いわき市で米作りや野菜栽培を営む白石長利さん。大学卒業後は、代々続く農家の跡取りとしていわきに戻り、MOA自然農法と呼ばれる無農薬・無化学肥料栽培に取り組んでいます。190アールの水田と110アールの畑、20アールのハウスで、米やブロッコリー、トマトのほか様々な農作物を作っています。自然の力で育った、おいしくて安全な農作物を食べて欲しいとの願いで、手間のかかる減農薬・無農薬農法に先代から挑戦し、様々な研究と試行錯誤を重ねてきました。

 しかし3年前の震災・原発事故をきっかけに、福島の農作物は大きな打撃を受け、流通量も一時は大きく落ち込みました。

 このとき、白石さんは冷静に状況を見つめ、「原発事故がきっかけで、これだけ食の安全に関心が集まったのだから、これをチャンスと捉えるべきだ」と考えます。消費者の不安は不十分な情報開示にあるのだから、改善すべき点は明確だと判断しすぐに行動しました。農作物に対する放射性物質の検査や情報開示に取り組みながら、農薬や化学肥料についても正しい知識を持っていただきたいと、今まで以上に積極的な情報発信に取り組みます。「震災を嘆いても仕方がない。農業やお客さんとこれからどう向き合うかが問われている」と痛感した白石さんは「自信を持って食べてもらえる安全な作物を育てて、しっかりと説明を行い、お客さんとのコミュニケーションに時間を割くようになった」といいます。

 震災を経て、原点に立ち返ったという白石さんの言葉には、行動の末に確信した手応えが滲んでいます。「震災前も以降も本質は変わっていません。選択してもらえる生産者を目指して日々努力を惜しまないことです」

(次号に続く/取材・執筆:岸田浩和)
 
行ってきました東北
やきとり店の常連や仲間たちで、震災後初めての田植えに挑んだ。
 
行ってきました東北
右が田植えの終わった水田
 
行ってきました東北
いわき市で有機農法に挑む「ファーム白石」の白石長利さん
 
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Information
●ファーム白石
福島県いわき市小川町下小川字味噌野16
TEL/FAX:0246-83-2153

ありがとうファーム
やきとり大吉いわき平店
いわき市見せる課プロジェクト

東北マップ
 
行ってきました東北
「石巻にダンスホールをつくろう。自分たちの手で」
行ってきました東北
石巻のラッパーであり、寿ダンスホールプロジェクトのリーダー、楽団ひとり
 
 今、石巻ではダンスホールを作ろうとしています。それも、地元の若手有志によるDIYで。

 話の発端はわずか3カ月前に地元(ほとんど唯一と言っていい)ラッパー「楽団ひとり」が発した「石巻でダンスパーティーやりましょうよ」という言葉でした。その時はIRORIというISHINOMAKI 2.0のオープンシェアオフィスと呼ぶ場所を会場にして、ホームパーティーのようなイメージでやりたいと話しただけでしたが、IRORIは音楽ライブなどもやったりするものの、2階に大家さんご夫婦が住まわれているため、夜9時を過ぎての大音量はNGです。その時に僕達が3年前のシンポジウム会場として使わせていただいた場所を思い出し、彼に「パーティーやるだけじゃなくて、ディスコ作っちゃおうよ」と切り返したことをきっかけに、DIYでのダンスホール作りが始まりました。

 
 20年近く前、当時オシャレな若者が集まるナイトクラブ的な居酒屋として有名なお店でしたが(その名残で防音やバーカウンター、照明などが残っているので、この物件を粘り強く交渉したのでした)、閉店後はオーナーが倉庫にしていたためにとても多くの物が置かれていました。

 僕達のFacebookへの書き込みに反応した地元の音楽好きな有志たちが、休日に集まり、さらにその友人たちに声をかけてその物件の片付けに入り始めました。資金はプレゼンテーションイベント「KIBOW三陸@石巻」で楽団ひとりがこの企画をプレゼンし、2位を勝ち取ったときの賞金だけ。ですが、Facebookでの呼びかけに全国から機材やミラーボールが届き、ロゴデザインやコピーライティング、人手集めなどそれぞれができることを結集しながら、6月7日、石巻発のサーキット型音楽フェス「パークロック石巻」でこけら落としとなりました。まだプレオープン状態ですが、DJやアイドル、一流のHIPHOPアーティストまでが音を鳴らし、多くの観客が踊りました。

 この場所がある寿町通りにはレゲエバー「ステレオグラフ」、ライブハウス「ブルーレジスタンス」という震災後にDIY的にできた音楽のための場があります。それらをつなぐように今回のハコ「寿ダンスホール」ができました。年齢やジャンルにこだわらず、様々な使い方をしていくための場にしていこうとしています。再開発までの限定的な場所ですが、これから石巻にお越しになる方々にはぜひ遊びに来ていただきたいスポットの一つです。荒削りだけれども熱い、石巻の面白さを感じてもらえるはずです。

(ISHINOMAKI 2.0 小泉瑛一)
 
行ってきました東北
パークロック石巻では仙台のGAGLEも舞台に立った
 
行ってきました東北
片付けを始める前の寿ダンスホール。スタートはここからだった

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Information
ISHINOMAKI 2.0 | 石巻2.0
http://ishinomaki2.com/
 
今月のお取り寄せ
 
今月のお取り寄せ
商品は冷凍で届きます。自然解凍で常温に戻しそのまま食べます。

今月のお取り寄せ
ご飯との相性の良さはバツグンです!
  ゴチまぐ!編集部
イチオシの理由は?

 東北というと有名なのが海産物。とりわけ、三陸海岸は豊富な漁場として有名です。ということで今回は三陸海岸で獲れたムラサキウニの瓶詰めをご紹介します。

 わかめやカジメなどの海藻を食べている三陸沿岸のムラサキウニは特に味が良いと定評があります。 編集部でも早速お取り寄せしてみました。

 今回はご飯とともにいただきました。瓶を空けると漂ってくるのは芳醇な磯の香り。

 塩加減も実に絶妙。適度に水分が抜け、うにの甘みがしっかりと感じられます。ご飯に乗せるだけでなく海苔などと共にお茶漬けなどで食べても美味しそうです。

 ぜひ一度お取り寄せしてみてください。
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お問い合わせ
・丸栄水産工業
http://www.utatsu.com/SHOP/1-A.html
 
 
【東北まぐ】 2014/06/11号 (毎月11日発行)
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編集 岸田浩和
取材 :岸田浩和、寺坂直毅、関裕作
制作 :本村彰英
表題写真 :岸田浩和
 
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