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東北まぐ7号 2012年2月

はじまりの種が芽吹きを待つ冬の東北。人々の熱気を全編レポートでお伝えします。【東北まぐ!】

東北まぐ
岩手県釡石市 石慶禅寺の石仏

はじめに

 釡石で出会った料理人は、ぽっかりと空いた心の穴を、お客さんの笑顔で埋めると誓い、店の再開を決めたと話してくれました。住む家や大切な人をなくし、途方に暮れた人々が空を見上げた、あの日の東北。彼らは立ち止まることなく、光のさす方向へ一歩づつ歩んでいます。すこし元気をとり戻した東北で、おいしいものを食べ、ともに笑ってみませんか。皆様が東北へ足を運ぶきっかけとなることを願って、東北まぐ第7号をお届けします。

行ってきました!東北

釡石をラジオで復興へ
   ~釡石やっぺしFM~

 ラジオは人の心に近いメディアです。広範囲ではなく、一人ひとりに問いかけ、確かな情報と安心を与えるものです。震災では、防災情報を伝える「災害FM」が様々な役割を果たしました。余震の情報、仮設住宅の情報などのライフラインを伝えました。東北全体に広がっていて、ラジオというメディアの良さが再認識されました。
今回は、エフエム岩手 釡井支局の佐々木茂博支局長にお話をお聞きしました。震災以降、釡石市の情報を伝える以外にも、毎週水曜日15時~16時まで「釡石市ふるさと元気隊 「釡石やっぺしFM」を放送しています。岩手県全体や、東北3県のラジオ局の放送がリアルタイムで聴けるradiko.jp復興プロジェクトを通じて、日本全国で聴くことができます。
釡石市の現状を伝えるのはもちろん、元気を発信しているそうです。DJは3人の若者。釡石出身のアーティストが生演奏を披露したりと、明るい話題を届けてくれます。ちなみに、震災後多く寄せられたリクエストは「アンパンマンのマーチ」が多かったそうです。佐々木支局長は語ります。「5~10年後の釡石が素晴らしい場所に復活するよう、1歩1歩ラジオを通じて進んでいきたい」と。「やっぺしFM」の「やっぺし」とは「やるぞ!」「いくぞ!」という意味。音楽と言葉の力で復興を目指します。

行ってきました!東北
釡石やっぺしFM放送中の様子

Information
radiko.jp復興プロジェクト
http://fukkou.radiko.jp/
釜石やっぺしFM
http://www.fmii.co.jp/kamaishi/

行ってきました!東北

~奇跡の牡蠣を訪ねて~
     「復興かき小屋」

 「あの大津波に耐えて、生き残ったカキがいるんですよ。」店長の佐々木隆さんは、今朝採れたという大きなカキを手に、満面の笑みで迎えてくれました。 
 ここは、岩手県沿岸部の山田町。09年に営業を開始した「かき小屋」は、目前に広がる山田湾の採れたてのカキを振る舞まう飲食施設として、人気を博して来ました。40分の食べ放題で、大人は1人2500円。カキのシーズンにあわせて秋にオープンし、翌年の5月まで営業が続きます。昨年はシーズン本番を迎えた3月に東日本大震災が発生。三陸沿岸で養殖されるカキの大半が壊滅状態に陥ったと言われています。ここ山田湾でもほとんどの養殖いかだが流されましたが、地形の影響で湾内に留まったいかだが発見され、地元漁師が懸命の移設作業を行いました。「残されたカキに、たくさんの栄養が行き渡り、かつてない大きさに育った」と佐々木店長。被災した「かき小屋」も、同町復興のシンボルとして昨秋に再開しました。
 席に着くとスコップで運ばれてくる大粒の殻付きカキ。熱い鉄板の上にうず高く積み上げられる光景は壮観そのもの。あちこちからどよめきが聞こえてきます。 蓋をして蒸し焼きにすること10分。うま味がしみ込んだあつあつのカキは、さわやかな磯の風味を漂わせます。今まで、カキが苦手だったという小野寺沙紀ちゃん(11)も、「生臭さがなくて、とってもおいしい」と、大粒のカキを幾つも平らげていました。
 カキが蒸し上がる間、 地元のお母さん達がテーブルにつき、興味深い話を聞かせてくれます。山田の歴史や魚介を使った郷土料理の話題、震災以降の日々の話など。テーブルのお客は笑ったり大きくうなづきながら、聞き入ります。
 同町観光協会の沼崎真也さんは、カキ小屋再建のおもいを次のように話します。「ここは、もともと山田の観光拠点だった場所。人が戻ってくる光景を見て、町の人は勇気付けられるんです。」ぜひ、奇跡のカキを味わいに、山田のお母さん達の元気な姿を見に、「かき小屋」へ足を運んでみてはいかがでしょうか。(H.K)

行ってきました!東北
「こんなに大きいんですよ!」と隣町から来たお2人 行ってきました!東北
正午には、4卓の鉄板がすべて満席に 行ってきました!東北
お店を盛り上げる店長の佐々木さんと地元のお母さん

Information
「復興かき小屋」 予約制
岩手県下閉伊郡山田町船越9-270
定休日:水曜日、木曜日(祝日の場合は営業)
予約先:山田町観光協会案内所
TEL 0193-84-3775(8:30~17:00)
http://www.yamada-kankou.jp/info/2011-10_kakigoya.html
公式ブログ
http://yamada-kankou.seesaa.net/

行ってきました!東北

おおふなと夢商店街
  ~人の笑顔が集まる場所~

行ってきました!東北
ブティックすみれ 鈴木さん親子

Information
おおふなと夢商店街
岩手県大船渡市字茶屋前57-6

 今、被災にあった各地で「復興商店街」が続々と作られています。津波の被害にあった商店が集結し、仮設店舗で商店街を新たに作る試みです。今回は、岩手県大船渡市「おおふなと夢商店街」におじゃましました。洋品店、書店、スポーツ用品店、鮮魚店、理容店、ラーメン店、焼き鳥店などなど、生活のすべてはここで全て揃う事が出来ます。仮設とはいえども、歩道はウッドデッキになっていて、アウトレットモールのような趣があります。今回は「ブティックすみれ」の鈴木隆也さんとお母様にお話をお伺いしました。 震災後、別地区でお店は再開していたのですが、再びこの大船渡駅前に戻りました。オープニングイベントは大賑わい。開店以来、人が集い、離れ離れになった人の再会の場という役割も果たしているのだとか。震災以降は動きやすいパンツが売れるそうで、スカートはなかなか売れないのだそうです。それでも大船渡の皆さん、徐々にオシャレをして、震災前の心に戻りつつあるといいます。「1日も早く、スカートをはいて街に出れるようになりたいとみんな思ってます」と鈴木店長は語ります。仮設商店街はおよそ2年間という期限があるらしく、その後はこの町に再びお店が建つ予定です。鈴木さんは「ぜひ地元でお買い物をしましょう。それが商店街、地域の復興につながります」といいます。一番の幸せはお買いもの。今、少しづつですが、その日常の笑顔が戻りつつあります。

復興への道のり

~教育の現場から・
  大槌臨学舎の挑戦 その1~

 がれきに覆われていた大槌の街は、冬を迎え一面の雪原に様変わりしていました。震災から10ヶ月を経たいま、消失した市街にはひと気のない静かな空間が広がっています。山裾の神社の境内に、暖かい橙色の光が漏れる場所がありました。上町ふれあいセンターの扉を開けると、「こんにちはー!!」とたくさんの中学生の明るい声がた聞こえてきました。
 いま女川町や大槌町で、放課後の学習支援を目的とした「コラボ・スクール」と呼ばれる新しい取り組みが始まっています。特定非営利活動法人NPOカタリバ(代表理事今村久美)が運営する「大槌臨学舎」には、受験を控えた85名の中学3年生が放課後になるとやって来ます。
 スタッフの川井綾さんは「いま被災地の子供達は、進学に大きな不安を抱えている」と説明します。震災直後、被災地の学校は長期間休校となり、充分な授業が行えなかったといいます。さらに自宅を失った子供達は、学びたくても勉強出来る場所がありません。仮設住宅で暮らす中学生の一人は、「自分の机が無から、家族が寝るまでほとんど勉強出来ない」と漏らします。家屋の倒壊率が8割に迫る女川や大槌町では、多くの子供達が同じような問題を抱えていました。
 ここで学ぶ丹野朋哉くん(15)は、将来の夢を「看護師とか医療に関わる仕事に就きたい」と話してくれました。震災後、避難所や病院で奔走する看護師の姿を見て「自分も人が困っているときに、活躍出来る大人になりたい」と感じたのがきっかけです。「受験は待ってくれない」と不安に感じていた彼も、臨学舎に来てから「問題が解けなくても、先生に聞いて最後は自力で解けるようになった」といいます。最後に丹野君は「寄付してくれた方やボランティア、応援してくれる人がいるから学ぶことが出来た。とにかく、さいごまで精一杯やり切りたい」と、拳を強く握ります。(H.K)

復興への道のり
今期は3クラスに分かれて、受験勉強に励みます 復興への道のり
「臨学舎」横の鳥居は、震災の火災で柱が焼け焦げていた 復興への道のり
「ここに来て、勉強の仕方が変わった」と丹野君

Information
コラボ・スクール 大槌
http://www.collabo-school.net/
特定非営利活動法人NPOカタリバ
http://www.katariba.net/
ハタチ基金
http://www.hatachikikin.com/index.html

“東北で見つけた”名物親父・看板娘
名物親父・看板娘
再開の理由は「残された者の使命だから」と福地さん 名物親父・看板娘
20畳の小さな店舗で、食卓の全てがそろう

 昨夜の雪が降り積もり、辺り一面が真っ白になった日曜日の朝。プレハブの仮設店舗で営業する生花と野菜の店「福地フラワー」には、午前中にも関わらずお客があふれていました。春菊をかごに入れたお母さんに「今晩は何にするの?」と店主の福地和久さん(69)が問いかけます。「鍋にしようかしら」という答えに「じゃあ、豆腐と糸こんにゃくもいるべ」と具材を一緒に考えます。 35年前に釡石の大渡で生花店としてスタートした福地フラワーは、津波で店舗を流されましたが、昨年11月に仮設店舗で営業を再開しました。20畳足らずの小さな店舗ですが、「新鮮な野菜があるから」と、飲食店の料理人も仕入れに訪れます。福地さんが冗談を言うので、店内から笑い声が止まりません。買い物客にここの魅力を尋ねると「やっぱり、ご主人とお話しできるのが楽しいのよ」と答えが。「うれしいねぇ」と照れながら、大きなみかんを3つもおまけしてくれる、名物親父でした。(H.K)

Information
「福地フラワー」
岩手県釡石市大只越「青葉公園商店街」
D棟1階
無休、営業時間9:30~17:50

今月のお取り寄せ

ゴチまぐ!編集部
      イチオシの理由は?

 今回ご紹介するのは「ほや塩辛」です。「ほや」も「塩辛」もかなり好き嫌い分かれますが、これはぜひとも一度は試して欲しい逸品。
ほやの生産量、日本一の宮城で水揚げされたほやを、10時間以内に下処理。急速冷凍し、塩辛にしています。通常、ほやは時間が経過すると臭みや苦味が増しますが、この「ほや塩辛」は迅速に処理しているため、嫌なえぐみはありません。シコシコ、クニュクニュとした食感と磯の香り、ほろ苦さは日本酒にぴったり。キリッとした辛口の熱燗と一緒に流し込めば至福の瞬間を味わえること間違いなしでしょう。お酒好きならば見逃せませんよ。

Information
「ほや塩辛」
横田屋本店はこちらをクリック
http://www.yokotaya.co.jp/

今月のお取り寄せ
【東北まぐ!】 2012/02/11号 (毎月11日発行) ツイートする
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編集 寺坂直毅 岸田浩和 梅澤恵利子
ゴチまぐ 関 裕作
スタッフ 野瀬紗也佳

発行元 :株式会社まぐまぐ
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配送技術:株式会社アットウェア http://www.atware.co.jp/

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