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東北まぐ18号 2013年1月

ボランティアの現状、医療現場の葛藤、現地から聞こえる再生の槌音。東北のいまを全編レポートでお届けします【東北まぐ!】

2013/01/11 ※サイトで読む 配信中止はこちらから
東北まぐ
そば「喜八櫓 きた道」のいろり端/宮城県石巻市
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はじめに
 高く広がる濃紺の空の下、石巻市雄勝の神社の境内で、二年振りの春祈祷が行われています。
お囃子が響く中、雄大な獅子の舞に子供たちの嬌声が聞こえてきました。神社は津波で流されたものの、新しい小さな社殿が建ち、この地に伝わる伝統の舞が人々を勇気づけます。
壊れたものが再建され、人々を支える心は確かに受け継がれてゆく、再起の年を迎えた海辺の町。一人でも多くの方が東北に足を運ぶきっかけとなることを願って。東北まぐ、第18号をお届け致します。
 
東北だより
 震災より1年10ヶ月。東北の被災地では地元の人たちが主体となったあたらしい情報発信の取り組みがスタートしています。「東北だより」では、東北各地に根ざしたローカルメディアの記者たちの協力を得て、地元発信の小さなニュースをお届け致します。
 今回は、宮城県石巻市を中心としたビジネスとカルチャーニュースを配信している石巻経済新聞より寄稿頂きます。

~石巻から再開の槌音~
東北だより
石巻経済新聞の勝邦義記者
東北だより
再開した石ノ森萬画館。日暮れまで多くの人が詰めかけた。
 
東北だより
「笠屋」の名物おからクッキー。食べ応えのある食感が人気だ。
 
東北だより
開店30周年を記念して限定カラーの記念シューズを販売した「リーガルシューズ石巻店」
 
   石巻経済新聞では地元から聞こえてくるニュース日々掲載しており、なかでも再開した店舗の情報を紹介する機会が増えてきました。震災後、多く店舗や商店が休業を余儀なくされましたが、改装や移転で営業再開にこぎ着けるケースが増えています。

昨年11月には石ノ森萬画館が再オープンし、再開当日には多くの人々が同館に集まりました。
旧北上川に浮かぶ中瀬に位置する同館は、震災後休業しながらも中瀬を活用したイベントを積極的に行なってきました。子どもの日の「マンガッタンまつり」や「アニぱら音楽館エクストリームライブ」など、震災後人が集まる場所が減った石巻で、子どもや大人が楽しめる場所を作って来ました。

 もともとこの中瀬は石巻の文化やレジャーの中心で週末は多くの家族連れで賑わう場所でした。その中瀬にあり映画を通して石巻の文化や娯楽の中心となっていたのが岡田劇場でしたが、現在は津波により建物が流失し営業を休止しています。かつて石巻には6つの映画館がありましたが、現在まちなかで映画を鑑賞できる場所は失われてしまいました。そうしたなか、12月8・9日の二日間、岡田劇場の協力で開催されたのが「金曜映画館」です。会場は旧みやぎ生協アイトピア店を改装して誕生したアイトピアホール。ポケモン映画やアキ・カウリスマキ監督の最新作「ル・アーヴルの靴磨き」など話題作を上映。当日は多くの観客が訪れました。

 まちなかでは老舗菓子店「笠屋菓子店」が再開。震災以前から販売していたおからクッキーもインターネットを通じて販売を開始しており、好調な売れ行きです。

 すでに再開したお店からも元気な試みが生まれています。リーガルショーズ石巻店では、30周年記念シューズの発売を発表。石巻だけで限定販売される同商品は注文予約も好調なようです。

 再開する店舗や新しい試みが、毎日どこかで起こっている石巻。遠く離れた場所から物を買う事もできますし、実際に足を運んで買い物したり、おいしいものを食べたりしてみてはいかがでしょう。実際にこの地を訪れ耳を傾ければ、そこかしこから小さな復興の槌音が聞こえてきます。(石巻経済新聞/勝邦義)
 
Information
「石巻経済新聞」
http://ishinomaki.keizai.biz/
 
いま必要なもの
「田代ジャパン」南三陸レポート(その2)
いま必要なもの
震災から650日を経た現在も、いまだがれきが残されている、南三陸の私有地。
 被災地向けのボランティアツアーを企画・運営している大学生、田代直樹さん。前号に引き続き、宮城県北部・南三陸町を訪れたボランティア・ツアーに同行し、参加者の声をご紹介いたします。(前回記事

「2万人近くの方が亡くなられた大災害だと言うのに、TVや新聞を見るだけでは実感がわいてこなかったんです。おなじ日本人として、知っておくべきだという思いもあって、ボランティアとして現場に入る事を決めました」と話してくれのは、現地の作業を取り仕切るNPO法人-DSP災害支援プロジェクトの酒井真悟さん(24)です。震災当時、地元関西で大学に通っていた酒井さんは、「現場でなければわからない事があるに違いない」と考え被災地で働く手段を探していました。周囲の友人からは「素人の学生が現地に行っても、役に立たないどころか迷惑をかけてしまう」と懐疑的な声を掛けられましたが、自らの脚で現地に立って「出来る事と出来ない事を知ること”から始めよう」と考え、このNPO法人の門を叩きました。
 今回は、「田代ジャパン」ボランティアチームの現場リーダーとして作業を取り仕切った酒井さん。作業を依頼した地元の方の思いを参加者に伝えたり、初心者へのサポートを積極的に行うなど、存在感のある仕事をこなしていました。日々の作業を振り返り「被災者の声を直接聞き、自分が何をすべきか真剣に考えて行動するここでの時間は、貴重な経験ばかり」と話し、「残りの期間も、一分一秒まで無駄にしないよう作業にあたりたい」と、意気込みを語ってくれました。

朝の陽光を受け、波頭がきらめく志津川湾。この海を間近に望む民家の敷地の片隅で、黙々とガレキを片付けるツアー主催者・田代直樹さん(21)の姿がありました。
「参加者は、それぞれの思いやきっかけがあり、ボランティアに参加してくれています。自らの意志で、被災地との縁を結んでくれたと言う事実が、何より嬉しい」と話す田代さんは、「現地を知る事が、それぞれの方が被災地での次の行動を生むきっかけに繋がっていく」と確信しています。
当初は、自身の就職活動が始まる昨年末を一区切りにするつもりだった田代さん。ツアー参加者の強い要望や現地からの声に後押しされる形で、2月1日出発からツアー再開を決めました。いつまで続けるのかと言う問いに、「こうなったら、『もう大丈夫、来なくていいよ』といわれるまで、続けるしかありませんね」と即答した田代さんは、「少しでも長くツアーを継続出来るよう、自分たちの体制も最適化していきたい」と話します。小雪のちらつく海風が吹き始めた午後。滑らかなストロークでがれきを掘り起こす田代さんのシャベルの音が、力強く響いています。(岸田浩和)
 
いま必要なもの
左より、現場リーダーを務めた酒井さん(DSP)とツアー主催者の田代さん(田代ジャパン)
 
いま必要なもの
2月のツアーでは、行方不明者の捜索を含む南三陸・神割崎再生プロジェクトに参加する予定。
 
いま必要なもの
作業終了後、地元の方とともに土地の食材を頂くこともある。
 
いま必要なもの
地域により格差はあるもののまだまだボランティア需要が無くなることはない。
 
Information
ボランティアツアー「田代ジャパン」
http://tashiro-japan.jimdo.com/
2/1(金)夜発ツアー 募集開始
http://a.mag2.jp/FPD2
 
復興へのみちのり
気仙沼市立「本吉病院」1
復興へのみちのり
津波の被害と常勤医の退職で、一時は崩壊の危機に瀕した本吉病院。地域唯一の病院を存続させるため、不休の立て直し作戦が続いた。
復興へのみちのり
看護師の斉藤さんと昆野さん。院内の業務のほか訪問看護も担当し、地域の医療を支えている。
 
復興へのみちのり
国際人道支援や災害復旧の現場で豊富な経験を持つ、林健太郎医師
 
復興へのみちのり
震災直後の津波被害により、1階の大半が水没した本吉病院
 
Information
日本プライマリ・ケア連合学会(PCAT)
http://www.pcat.or.jp/
「本吉病院」研修医・派遣プロジェクト(動画)
http://www.youtube.com/watch?v=xcUHpOMMvEs
   午後5時。冬の東北は夕刻の余韻を感じる間もなく、瞬く間に夜が迫ってくる。外灯がいましがた点灯した気仙沼市立「本吉病院」の駐車場に、1台のミニバンが滑り込んできた。仙台で開かれた打ち合わせを終えた林健太郎医師(39)が、夜勤のために本吉まで戻ってきたのだ。時計を気にしながら病院の玄関をくぐると、外出用の上着を羽織った看護師、紺野由美と斉藤志津香がこちらに向かって歩いてくる。林の姿に気づいた2人は「先生お帰りなさい!」と笑顔を見せ「訪問診療にいってきます。点滴の交換なので20分程で戻りますね」と報告を行った。「気をつけて!」と返した林に、彼女たちはにっこりと微笑み、足早に駐車場へと向かっていく。往診用のバッグが小気味よく揺れる彼女たちの後ろ姿を、林はガラス戸越しに頼もしい思いで見送った。

 国境なき医師団や国際医療支援チームの一員として、長年に渡り世界の紛争地で医療活動を行ってきた林は、まさか日本でこうした経験が役立つとは思ってもいなかった。震災直後の東北沿岸部では、多くの医療施設が被災。「戦渦のイラクやハリケーン襲来後のミャンマーの状況に酷似していた」という林の言葉どおり、病院が津波で破壊され、物資や水の入手が困難になるなか、限られた人員と手持ちの器具で治療を行わねばならなかった。外部からの緊急支援で被災直後の急場を乗り切ったあとも、長期化する避難生活のストレスや不十分な設備と環境の問題から、さまざまな課題と対峙している。
 震災直後より被災地に入った林は、海外での経験を買われ、被災地域の医療体制を中長期的に支援する特別チーム「PCAT(日本プライマリ・ケア連合学会・東日本大震災支援プロジェクト)」の指揮を任されることになった。以後650日間、崩壊した東北沿岸部の医療現場に深く入り込み、物資や人の支援の最適化や、新しい医療・保健システムの構築に広く携わる事になった。

 その成果の一つが、先ほど見た光景――看護師たちによる「訪問診療・看護」の確立だった。入院設備が使用出来なくなり、行き場を失った患者たちをケアするため、自宅を訪問して診療・看護する仕組みを立ち上げた。経験がないスタッフたちの試行錯誤と奮闘を思い起こし、「ようやく、ここまで来れました」と顔をほころばせた林。次のステップは、「ローカルの人材で、自立した運営を継続できる体制づくり」に狙いを定めている。診察室に入った林は、辺りを見回し大きくうなずいた。「本当の大仕事はこれからですよ」(岸田浩和)
 
東北からの”お便り”のコーナー
~テーマ:私の好きな東北の風景~
今回は、気仙沼市岩井崎での初日の出の写真です。投稿下さったのは、玉川修一さん(気仙沼市出身)。
「水平線から昇る初日の出を求めて、中学生のときからこの場所に通い続けてきました。ある年は、水平線に雲がかかっていたり、その次の年は天気そのものが曇りだったりと、なかなか条件には恵まれませんでした。それが二十数年目の今年、ようやく最高の初日の出を拝むことができました。」
寄稿募集のおしらせ
次回のタイトルは、「わたしの好きな東北の冬」。
東北の冬にまつわる写真とエピソードをご応募ください。冬の味覚を取り上げるも良し、冬ならではのお気に入りの場所を紹介するもよし。写真にコメントを添えてご応募ください。施設や場所の名前、店舗やメニューは正式名称でご記載お願いいたします。お寄せいただいたお便りの一部は、来月の誌面でご紹介したり、時には現地へ取材にお伺いするかもしれません。施設や店舗の場合は、応募の際に誌面で紹介される可能性があると、ひとことお伝えくださいますようお願いします。
 おたよりはこちらまで
 
今月のお取り寄せ
クッキングまぐ!編集部イチオシの理由は?
今月のお取り寄せ
 もうとっくにお正月は終わってしまいましたが、皆様、新年あけましておめでとうございます。今年も本コーナーでは東北の美味しいお取り寄せグルメをご紹介してまいります。新年1号目でご紹介するのは、岩手の知る人ぞ知る名品、『ほたての卵のおかず味噌』です。

 こちらは2012年いわての物産展等実行委員会会長賞を受賞した一品。ほたての卵をたっぷり使用した、ほんのり辛いお味噌とのこと。

 今回は、定番の食べ方として、温かいご飯に乗せて試食してみました。

 新年最初の号で書く事ではないのかもしれませんが、この商品、今年、本コーナーで紹介するものの中でベスト5入りは確実ではと言える美味しさです。

 舌に触れた時の最初の印象は「濃厚で甘塩っぱい味わい」なんですが、そこから段々と辛味が顔を出してくるグラデーション加減がまさに絶妙なんです。

 甘すぎず、塩っぱすぎず、辛すぎず、それでいてほたての卵の濃厚な味わいはしっかりと感じさせる。まさにご飯の友、親友と言っても過言じゃありません。

 ご飯以外では、焼肉やにゅうめんの薬味、一口大に切って素揚げした茄子にちょっと付けたりしても美味しく食べられるんじゃないでしょうか。

 クッキングまぐ!編集部が自信を持ってオススメできるこちら、ぜひ一度お試しください。
 
今月のお取り寄せ
三陸藻菜シリーズ・佃煮 三陸の味!
ほたての卵のおかず味噌 380円
 
Information
ご注文はこちら↓
早野商店
http://i-hayano.jp/shop/
 
 
【東北まぐ】 2013/01/11号 (毎月11日発行)
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編集 :岸田浩和 梅澤恵利子
クッキングまぐ! :関 裕作
スタッフ :野瀬紗也佳
表題写真 :岸田浩和
 
発行元 株式会社まぐまぐ
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配送技術 株式会社アットウェア
 
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