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東北まぐ9号 2012年4月

春色に染まる4月の東北。野山には桜が舞い、町には始まりの掛け声が響きます。【東北まぐ!】

東北まぐ
夕闇の気仙沼湾/アーバンマリアチャペル

はじめに

 あの日から数えて2度目の春がやってきました。東北の市場には春の食材が並び、学校には新しい仲間がやってきます。はじまりの季節を迎えた東北では、人々が新しいまちの地図を描きながら、旅人の来訪を心待ちにしています。みなさまが東北に足を運ぶきっかけとなることを願って。東北まぐ第9号を届け致します。

行ってきました!東北

「町に光りを取り戻せ
    キッチンカー屋台」

行ってきました!東北1
キッチンカーに小屋がドッキングしているので、天候の心配なし! 行ってきました!東北1
狭い店内では、見知らぬお客さん同士や店主も一緒に盛り上がります 行ってきました!東北1
石黒農場直送の”ホロホロ鳥のたたき”は「和っつ」の人気メニュー 行ってきました!東北1
三陸の魚介は俺に任せて!と「乾杯」の三浦さん

 釡石市大町地区。かつてはにぎわった商店街と繁華街も、津波の被害が大きく夜は真っ暗です。車のヘッドライトに照らされた町並みには、ブルーシートで覆われた商店や半壊したビルが浮かび上がり、人通りもまばら。地区の中心を貫く青葉通りにやってくると、ようやく明かりが目に飛び込んできました。日中は移動販売で各地を回っていたキッチンカーが連なって、夜の屋台営業を行っていました。
 この日の営業は、釡石ラーメンの「新華園・支店」、鳥料理の「和っつ」、地場の魚介メニューが豊富な「乾杯」の3台です。夜間でも寒くないよう、半透明のシートで覆われた小屋が設けられ、カウンターを7~8人が囲めるようになっています。
 「和っつ」に入るとオーナーの福士達也さんが、全国でも珍しい「ホロホロ鳥」を調理していました。「さっぱりしてるのに、甘みがあっておいしいですよ」と宮古の映画館主が「ホロホロ鳥のたたき」を2~3切れお裾分けしてくれました。地元雑誌の編集長や、三重からやって来た海洋学者の先生と一緒に、地元の日本酒談義に花が咲きます。「普通の飲食店より、お客さんと距離が近いから話しが盛り上がるんですよ」とオーナーの福士さん。「それに、お客さん同士も近いからすぐに友達になっちゃうんですよね」と編集長が笑います。
 このキッチンカーを使ったプロジェクトは、以前から釡石の街おこしに関わっていたプラットフォームサービス株式会社(現在は、株式会社釡石プラットフォームが主体)と自治体の外郭団体が連携する復興事業の一つです。店舗が流出した飲食店オーナーの事業再生を目的に始まった取り組みで、釡石常駐の担当者・関口さんは「最終的には自主店舗の再開にこぎ着ける事がゴール地点」だといいます。
 次に入った「乾杯」では、オーナーの三浦さんが地元の毛ガニやわかめをふる舞ってくれました。津波で、新築間もない店舗と親族を失った三浦さんは、震災当初は店舗の再開など夢にも思わなかったといいます。所属する野球チームの仲間が、一人二人と町から離れて行くのを見て、猛烈な危機感を感じた三浦さんは「生き残ったおれの使命だから」と、店舗の再起を決意しました。「明かりがあれば、人が集まる。人が集まれば、のんだり笑ったりして”居場所”が出来るんですよ」と三浦さん。「小さな飲み屋の親父でも、このまちの役に立てるなんて、うれしいじゃないですか」と、カウンター越しに満面の笑みを浮かべます。(H.K)

Information
かまいしキッチンカープロジェクト
http://www.kamaishien.com/
釜石プラットフォーム
ホームページ

行ってきました!東北

三陸のスーパーマーケット
   ~住民の命を守りたい~

 スーパーマーケットは、その街の巨大なキッチンといえます。いま日本各地の過疎地域では「スーパー難民」という言葉がいわれる程、店舗が消滅していますが、岩手・三陸地域のスーパーマーケットチェーン「マイヤ」は今、華々しく開店ラッシュなんです。
2011年3月以降、大船渡、陸前高田、大槌の6店舗が全壊。それでも3月11日、夕方には真っ暗闇の店内で、天井などの安全を確認した上で、自動車のヘッドライトを照明にして営業をしていたのです。「地域がどんな時でも、住民の命を守る。それがスーパーマーケットの指令なんです」と、株式会社マイヤの新沼聖さんは話します。翌日からは衛星電話を使い、「○○地区には○○が不足している!」という情報収集をし、救援物資の拠点として活躍しました。
マイヤの創業は1961年。チリ地震津波の翌年、被災地となった大船渡市に創業しました。復興を支えるシンボルとして、三陸の人々の食生活、住生活を支えました。2011年、創業50年の記念すべき年に、再び被災しました。「どんな状況でもスーパーマーケットは住民を守る。」50年前の苦難も乗り越えた。今回も変わらず希望を捨てない。その誓いを表したかのように、被災した地域に、新店を続々オープンさせているのです。 去年3月以降3店舗オープン。マイヤ滝の里店は仮設での営業ですが、お客さんが殺到。買い物するだけではなく、スーパーマーケットは地元コミュニティーの拠点でもあり、避難所でバラバラになった人の再開の場となり、店内は多くの笑顔で溢れました。「レトルトや冷たいものが多かった食生活。やっと手作りの、温かい料理を作れるようになった」と、日常の喜びを噛みしめる声が多かったそうです。中でも海産物、生鮮食品が飛ぶように売れたそうです。今後は創業の地、大船渡にも開店。仮設住宅での移動販売車も好評です。週6回、約15カ所の仮設住宅で食品など販売しています。テーマソングが流れる度に笑顔になる人も多いそうです。これからもマイヤは、三陸の生活を守り抜くのです。

行ってきました!東北
開店で賑わうマイヤ

Information
マイヤ本部
岩手県大船渡市盛町字木町14-5
http://www.maiya.co.jp/index.html

行ってきました!東北

進みつづける理由
    ~すがとよ酒店~

 気仙沼から陸前高田へと向かう東浜街道。かつては商店や人家が密集していた鹿折地区には、いまは広大な空き地が広がっています。ところどころに座礁した漁船が横たわっており、潮風が吹くたびに砂塵が舞い上がります。この街道から分岐するかもめ通り沿いに、緑色のテントがぽつんと1張り建っていました。近づくと、中から帽子をかぶったお兄ちゃんが出て来ておいでおいでと手招きしています。「時間あったら見ていってよ」と元気よく誘われて中をのぞくと、そこには数十本の酒瓶が並んでいました。
 ここは、気仙沼で酒屋を営んで90余年を迎える「すがとよ酒店」の店舗跡。手招きしてくれたのは、4代目の菅原豊樹さん(38)でした。手元にある一升瓶を高々とかざし「好きなのがあったら、遠慮せず言ってくださいよ」と、道行く人に声をかけます。陽光をうけ薄緑に光る一升瓶は、ラベルが剥がれ満身創痍の様相です。「あっ、これはお金いらないから。欲しい人に持って帰ってもらってるの」と豊樹さんが説明します。
 現在すがとよ酒店は、同市の太田地区に出来た仮設店舗で営業中。この日は「親父の弔いにと思って、元々店舗があった場所で店開けている」とのことでした。
 津波が来たとき、店舗のシャッターを閉め商品の流出を防ごうとした父、菅原豊和さん。結局自宅と店舗は波にのまれて倒壊してしまいましたが、がれきの中から400本近くの酒瓶がみつかりました。豊樹さんは「流れずに残った酒瓶を見たとき、店は絶対やめられない」と思ったといい、残された家族ですがとよ酒店の再建にまい進しました。
 「38年間、ずっと一緒に仲良くしてくれた主人には、感謝の言葉しかない」と話す母、文子さんは、奮闘する豊樹さんたちの姿を見ながら「負げねえぞ気仙沼」という書をしたため、地酒のラベルとして思いを込めました。
 震災から1年を経て「県外の人の感心が薄れて行くの仕方ない事だと思う。でも、町の復興には外の方のチカラが必ず必要」と話す菅原豊樹さん。「被災者だからと甘えずに、新しいこと、外の方が関心を持っている情報をどんどん発信して行きたい」と、次の一手を語ります。(H.K)

Information
すがとよ酒店
注文FAX:0226-24-1111
e-mail:sugatoyo@gmail.com
Web(開設準備中):http://sugatoyo.com/

復興への道のり
今日は特別に、かつての店舗あとで臨時開店! 復興への道のり
「好きなのあったら言ってくださいよ!」と4代目の豊樹さん。 復興への道のり
津波に流されずに残った酒瓶たち 復興への道のり
母の文子さんの書いた「負げねえぞ気仙沼」のラベルは復興のシンボルに

復興へのみちのり

教育の現場から
  ~大槌臨学舎・女川向学館の挑戦 その3~

復興への道のり
「花巻よりすげー」「当たり前だよ!」初めての東京に期待が膨らみます 復興への道のり
大槌と女川の生徒が、自らの言葉でお礼と報告を行った 復興への道のり
「先生、高校受かったよー」久しぶりに再会したボランティア教師に喜びを伝える生徒 復興への道のり
生徒のメモには「感謝」と「まちの復興のために」という言葉があった

 津波の被害で自宅や塾を失った子供たちが、安心して勉強が出来る「場」を取り戻せるように。東京の特定非営利活動法人・NPOカタリバ(代表理事今村久美)が、宮城県女川町と岩手県大槌町で、学習支援を目的とした放課後学校「コラボ・スクール」の運営に取り組んでいる。震災から1年を迎えたいま、高校受験を終えた生徒たち124名がこの春巣立って行く。

 支援企業や支援者へのお礼と受験の報告をする旅を企画します。こんな案内が、コラボスクールで学ぶ受験生の元に届いた。受験の合格発表の興奮冷めやらぬ3月下旬、「やくそく旅行」と名付けられた4日間の東京ツアーに、自ら手を挙げた生徒20名が参加した。大槌と女川からやって来た生徒達は晴れやかな表情で、支援してくれた企業を周り受験の結果を報告した。また、前線で働く社会人とふれあうことで、将来の夢を大きく膨らませた生徒もいる。旅程最後の夜、生徒からの報告会が開かれ40名の支援者を前に生徒たちがそれぞれの思いを語った。
 大槌出身の女子生徒は、支援者に向かって大きく一礼すると、しっかりとした口調で震災当時を振り返った。「震災の後、自分が何をしたらいいのか何をしたいのかわからず混乱していました。私が死んでしまった方が良かったのかも。」と深く思い詰めていた様子をよどみなく話した。秋からコラボ・スクールに通いはじめてようやく「つらいことを口に出して大人に打ち明けられるようになった」といい、受験や将来のことも考えはじめたと回想する。「受験勉強のサポートは心強かったが、更に大きなものを得た」と話す彼女は、「夢や目標を周囲に話すことで、たくさんのヒントやチャンスが巡ってくることに気づいた」とこの1年の変化を振り返る。 ボランティア教師として現地にやってくる様々な経験を持った大人達とのふれあいは、彼女に大きな自信やひらめきを与えたようだ。最後に「ここに立つ勇気と、自分の夢に誇りを持てるようになったのは、皆さんのおかげです」と笑顔で感謝の気持ちを伝えた。(H.K)

Information
コラボスクール・大槌臨学舎・女川向学館
http://www.collabo-school.net/
NPO法人カタリバ
http://www.katariba.net/
ハタチ基金
http://www.hatachikikin.com/index.html

今月のお取り寄せ
今月のお取り寄せ
地ビールは手作り感溢れるラベルも魅力。 今月のお取り寄せ
濃色の「デュンケル」はお肉など濃い味の食事にもマッチします。

ゴチまぐ!編集部
      イチオシの理由は?

季節は春、段々と暖かくなることで、ビールが恋しくなるという人も多いのではないでしょうか?

ということで、今回ご紹介するのは1997年に宮城県の地ビール第一号として生まれた「松島ビール」です。

「松島ビール」には4種類あり、それぞれがしっかりとした個性を持っている点がポイントです。

「へレス」は喉越しが爽やかで、味もまろやかなのが特徴。のど越しにしっかりとした清涼感を感じられます。「バイツェン」はフルーティーで軽さを感じる酸味が実に魅力的な1杯。「デュンケル」は焙煎した麦芽の香り、深いコクと苦味がビール好きにはたまらないテイストです。「ボック」はアルコール度数が7%と高く、麦芽の風味もしっかり感じられるビールです。酸味も強めですので中・上級者向けといったところでしょうか。

飲みやすいものから、ビール好きも満足できるものまで取りそろえているので、パーティーなどに持参すれば喜ばれること請け合い。今の時期なら、お花見のお供としてもオススメしたい逸品です。

Information
松島ビール(330ml)6本セット 3000円
夢実の国 通信販売
http://www.tinet-i.ne.jp/yumemi/sale.html

【東北まぐ!】 2012/04/11号 (毎月11日発行) ツイートする
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編集 寺坂直毅 岸田浩和 梅澤恵利子
ゴチまぐ 関 裕作
スタッフ 野瀬紗也佳

発行元 :株式会社まぐまぐ
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http://www.mag2.co.jp/contact/adinfo.html
配送技術:株式会社アットウェア http://www.atware.co.jp/

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