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東北まぐ10号 2012年5月

あたらしい営みがそこかしこで産声をあげはじめた東北のまち。人々の熱気を全編レポートでお伝えします。【東北まぐ!】

東北まぐ
土休日に無料運行される観光ボンネットバス/岩手県宮古市

はじめに

 ただ、新しい建物を作り直すだけじゃだめなんです。帰って来ることの出来るふるさとを創るんです。この春、東京の企業から地元NPOにUターン転職したと青年は、真新しい作業着姿で晴れやかに抱負を語ってくれました。
 再開した観光用の路線バス、活気が戻りはじめた魚市場。再び走りはじめた東北では、地元の人と外の人が協力して町に熱を宿しています。
 みなさまが東北を訪れるきっかけとなることを願って。東北まぐ、第10号をお届けします。

行ってきました!東北

映画がはこぶ笑顔!
    「みやこシネマリーン」

行ってきました!東北
アニメ上映の日は、子供たちで賑わいます。
行ってきました!東北
移動上映と館の運営に奔走する櫛桁(くしげた)支配人。
行ってきました!東北
このスクリーンを目指して、車で数時間掛けてやってくる人も。
行ってきました!東北
みんなで大合唱!移動上映での一コマ。
行ってきました!東北
「たのしかったよ」震災後の上映再開に寄せられたお礼の声。

 三陸の港町、宮古にある生協「マリンコープDORA」。晴れ渡る青空の下、休日の午後を楽しむ買い物客で駐車場は満車です。車から降りた小学生の兄妹が、色違いのリュックサックを揺らしながら勢い良く店内に走って行きました。2人は迷う事なくエスカレーターへ直進し、瞬く間に視界から消えていきました。目指す先は、岩手県沿岸唯一の映画館「みやこシネマリーン」です。
 「宮古って、映画のまちだったんですよ。こんな小さな町なのに昔は7館も映画館があったんですよ」と話すのは、「みやこシネマリーン」の支配人、櫛桁一則さん(40)です。ビデオデッキの普及などで、91年には全ての映画館が閉館しましたが「もう一度、映画館を」という声が高まり、97年にこのシネマリーンがオープンしました。「ここ数年は、赤字すれすれの経営が続いて、毎日電卓を片手にヒヤヒヤしていた」という櫛桁さん。昨年の震災では、館の被害は少なかったものの、長期の休館に入り先の見えない不安を感じたといいます。
 震災特番や報道一色のTVを見ながら、春休みの今頃なら「ドラえもん」の新作を楽しみにしていた子供も居たんじゃないだろうか?と思った櫛形さんは「1人でもお客さんが来るならオープンさせよう」と考え震災二週間後に、上映再開に踏み切りました。「久しぶりに子供の笑顔を見る事が出来ました」と話すお母さんの言葉を聞き、「自分に出来ることは"これ"しかない」と確信します。
 その後、仮設住宅にいる子供たちやお年寄りに映画を届ける「巡回映画」を計画。昨年の5月以降岩手の沿岸部を中心に、100回近くの上映を続けています。
 「子供達が肩を組んでとなりのトトロを大合唱する姿」や、「おじいちゃんたちが寅さんに拍手喝采する姿」をみて、TVにはない「大勢で一緒に楽しめる映画のちから」を強く感じたといいます。
 待合室で座っていると、先ほど走っていた兄妹の妹がぽろぽろと涙をこぼしながら劇場から出てきました。映画のチラシを握って「感動したの」という彼女の姿に「そうか!いま上映している”クレヨンしんちゃん”は、兄弟が助け合うストーリーだったよな」と合点がいきました。楽しそうに売店でグッズを買って、家族で肩を並べて帰って行く兄妹の背中を見ながら、櫛桁さんは「僕に出来る事を、精一杯続けたい。今はそれだけですよ」と笑顔をみせます。(H.K)

Information
みやこシネマリーン
岩手県宮古市小山田2-2-1マリンコープDORA2F
TEL&FAX:0193-64-5588
e-mail: cinemarine@yahoo.co.jp
スタッフブログ:
http://cinemarine.blog45.fc2.com/

行ってきました!東北

がれきの河原を花畑に!
    「菜の花プロジェクト」

 美しい花は、華麗さだけはなく心を豊かにしてくれます。今、瓦礫が置かれていた川を、菜の花で埋め尽くそうとする一人の男性がいます。「大槌町菜の花プロジェクト」の金山文造さんです。大槌町を流れる大槌川。以前は、白鳥が悠々と泳ぎ、サケが遡上する、四季折々の風景を楽しめる川でした。しかし、震災後は河川敷は瓦礫置き場となってしまったのです。そこで金山さんが立ち上がりました。川を元通りに、そして亡くなった方の供養にと、瓦礫が片付いた河川敷にて一人でつるはしを握り、土をおこして菜の花の種を蒔きはじめたのです。
 菜の花にした理由は、青森県横浜町の広大な菜の花畑を訪れた時の感動。そして、黄色は人の心を癒すという思いもありました。一人で始めたプロジェクトですが、今では全国から種が贈られ、ボランティアも手伝っています。参加した人数は10000人ほど。大型バスで訪れる事も。神奈川県横浜市の小学生が募金活動して、肥料を寄付してくれたこともあるそうです。金山さんのご自宅には、小学校の児童から送られた復興への思いを綴る手紙や寄せ書きが部屋一面に飾られています。「最初はオイラ一人でつるはし持ってやった。今はこんなに大勢の人が参加してくれてる。すげぇ事だと思ってる」こちらが癒される程の笑顔を見せながら金山さんは言いました。ゴールデンウィーク過ぎが見頃。菜の花は河川敷一面に植えられている区画と、文字の形に植えられている区画があります。その文字は、金山さんの切なる思いの文字が描かれています。
 その文字は、「負けない心」。今後は、仮設の小学校に菜の花のプランターを寄贈したいと思っています。「再び子供たちが笑顔になって欲しいんだ」
 今日も金山さんは、花で埋め尽くされた三陸沿岸の姿を思い描きながら、菜の花の種を蒔き続けます。

Information
大槌町菜の花プロジェクト支援会
フェイスブック
http://www.facebook.com/nanohanaPJS

復興への道のり
金山文造さん。
復興への道のり
大槌川に花を咲かせた菜の花(4月中旬撮影)。
復興への道のり
児童から送られた菜の花の絵。

復興へのみちのり

情報発信のかたち
    「復興釜石新聞」

復興への道のり
民家2階が編集部。MACとDTPソフトを使って紙面レイアウトを作成する。
復興への道のり
「やることは山積みだよ」と川向編集長。
復興への道のり
週二回、全世帯へ配布される新聞は、行政かの情報を市民へ伝える強力なパイプになった。
復興への道のり
創刊号一面の写真を撮影した浦山奈穂江記者。

Information
「復興釜石新聞」
http://www.morioka-times.com/topics/hukkoukamaisi.htm
連絡先:岩手県釜石市住吉町3の3
合同会社釜石新聞社
電 話:0193-55-4713
メール: kamaishi-shinbun@kmail.plala.or.jp

 釜石駅から車で5分、山裾に広がる住宅街の一角に昭和のたたずまいを残す一軒家が建っている。二階の窓には大きな字で「釜石新聞」と書かれた紙が貼られていた。
 ここ「釜石新聞社」は、昨年6月に誕生した三陸沿岸で最も新しい新聞社だ。編集長の川向修一さん(59)をはじめ、半数以上のスタッフが釜石の夕刊紙、岩手東海新聞の元メンバーだ。津波で輪転機をやられ、発行困難となった東海新聞は休刊。当初、川向さんは復刊を模索していたが運営のめどが立たず再開を断念した。 定年間近の年齢や町の状況を考え「もう記者の仕事をする事はないだろう」と引退を意識していたという。
 震災直後より、インターネットになじみのない世代から「情報が届かない」という声があがっている事が気になっていた。震災から1ヶ月を経た頃、盛岡の同業の友人から、印刷の手伝いなら出来るとの報せが入る。同じ頃、同級生でもある野田武則市長から、「市の情報を市民に伝える"紙媒体"が必要」と相談を受けた。電気の通わない世帯も多かった当時、市はめまぐるしく変わる状況を市民に伝える手段を失っていた。「何とかしてやりたいが、自分は引退した身だから」少しだけアドバイスをするつもりで関わりはじめたのに、気がつくと新しい媒体を立ち上げようと自分が先頭を走っていた。
 川向さんは新しい新聞の立ち上げに際し、被災地の情報を外に伝える「報道」ではなく、市民に生活情報を届ける「かわら版」のつもりで紙面を組み立てたという。 4ページのうち1ページは共同運営となった市の「広報」ページにあて、釜石の全世帯2万軒に配布する。
 最初は記者が2人しか居らず「完全な見切り発車だった」。忙しすぎて"ぶっ倒れる間もなかった"という状況は、前職で広告や営業だったメンバーが記者のしごとを手伝いながら救ってくれた。
 全世帯配布は、配達をかねた行政連絡員が揃わない日も多く、 記者自らが配達にまわる事も少なくない。それでも、地元に根を張る商店や店舗が広告を出す際は、格安で市の全世帯に届くこの媒体の存在は大きい。外に向かって情報を発信するメディアが多いなか、なかの人が必要な情報を届ける媒体は、なくてはならないインフラとして深く根付きはじめている。
 最後に川向さんは「いま被災地で旗を振ってる人って、震災前からやってた仕事を一生懸命続けている人とか、 気がついたら巻き込まれてた人とか、普通の人たちなんですよ」と強調する。「 特別な力を持ったヒーローなんて、ここには一人もいないんです。皆が自分の場所で踏ん張っている。 そんなまちの人に向き合う新聞として、我々もいま必要な事を続けて行きたい」という。(H.K)

復興へのみちのり

教育の現場から
  ~コラボスクールの挑戦 その4~

 津波の被害で自宅や塾を失った子供たちが、安心して勉強が出来る「場」を取り戻せるように。東京の特定非営利活動法人・NPOカタリバ(代表理事今村久美)が、宮城県女川町と岩手県大槌町で、学習支援を目的とした放課後学校「コラボ・スクール」の運営に取り組んでいる。震災から1年を経たいま、高校受験を終え新たな生活へと踏み出した卒業生たちの思いをきいた。

 学校を支えてくれた支援者や企業へ、直接お礼の言葉を伝えたい。124名の卒業生を代表して、大槌と女川の生徒20名が東京を訪れた。この日、高円寺の報告会場には約40人の支援者が集まっていた。
 大槌出身の新田洸太郎君(15)は、マイクを受け取ると満員の会場に向かって深く一礼した。「僕は津波にのみ込まれるまちを見ながら、怖くて震えているだけでした。震災後しばらくの間は生きて行くのに精一杯でなにも考える事が出来ず、自宅が流されたことを聞いた時も、まるで人ごとの様に感じていました」生々しい光景を目前に見た被災地の子供の多くが、こうした混乱や無力感に苛まれているという。内陸や県外では日常がとり戻されて行くなか、被災地の子供をとりまく環境は1年前と大きく変わっていない。
 「震災が起きて自分の町がこんなに大きな被害を受けても、沢山の人たちが助けに来てくれました。自分が多くの人に支えられ生かされていることに気づきました」唇を噛み締め、こみ上げて来た何かをこらえるよにうなずく新田君を、会場中が温かく見守っている。いままで将来の夢というものを持っていなかったという新田君は「この出来事を通して、自分の故郷の復興に貢献したい。それが支えてくれた人たちへの恩返しになるのではと考える様になった」と話す。他の多くの生徒も将来、医療関係や消防の仕事に就きたいと語る姿が印象的だ。まだ具体的に何がしたいのか決まっていないという新田君は「高校生活を通して、何が出来るのかを探して行きたい」と力をこめた。
 コラボスクールでは、地元で被災した塾講師や全国のボランティアが子供達の学習支援を行っている。 代表の今村さんは「生徒自身が目標を見つけ、毎日の勉強を通して日常をとり戻す事が大切」と語る。 最後に大きく息をつき、メモから視線を上げた新田君は「将来は、沢山の人と協力しながら必ず大槌を復興させます。これが僕の約束です」と思いを伝えた。(H.K)

Information
コラボスクール・大槌臨学舎・女川向学館
http://www.collabo-school.net/
NPO法人カタリバ
http://www.katariba.net/
ハタチ基金
http://www.hatachikikin.com/index.html

復興への道のり
自らの「約束」を語った大槌町の新田君(15)。力強い言葉に、支援者は聞き入った。
復興への道のり
先期は、女川と大槌で数百名の生徒が勉強に励んだ。
復興への道のり
女川向学館で教鞭をとる塾講師の山内哲哉先生は、被災者の一人。
復興への道のり
震災から一年、復興とは程遠い様子の大槌町中心部。
復興への道のり
「過酷な状況の中だからこそ、進学の希望や将来の夢をあきらめてほしくない」と代表理事の今村さん。
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見ただけで美味いと分かる逸品。いくらとアワビ、めかぶが眩しい!
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今回はほかほかご飯に乗っけていただきます!

ゴチまぐ!編集部
      イチオシの理由は?

東北といえば何と言っても有名なのが海産物でしょう。
特に三陸はアワビやウニ、なまこなどの高級食材でも広く知られるまさに海産物の宝庫。

今回はそんな高級食材をふんだんに使用した、その名も「三陸海宝漬」をご紹介しましょう。

まず驚いてしまうのがその豪華さでしょう。大ぶりに切ったアワビにイクラがたっぷり、そこにめかぶ、ししゃもの卵が入ったその見た目は圧巻の一語に尽きます。

もちろん見た目だけでなく味も超一流です。
一口食べてみると、柔らかく煮込まれたアワビのモチモチした食感に、ししゃもの卵といくらのプチプチ感が絶妙に絡み合ってきます。
そこに、めかぶの旨味とネバネバ、磯の香りが合わさり、とにかく深い味わいになっています。

炊きたてご飯にかければもう箸が止まりません!
味がしっかりしているのでご飯のお供にはもちろん、日本酒のアテとしても最高です。

この機会にぜひ一度お試し下さい。

Information
三陸海鮮料理 釜石 中村家
三陸海宝漬(化粧箱入) 3500円
http://www.iwate-nakamuraya.co.jp/app/article_detail.php?pid=126

【東北まぐ!】 2012/05/11号 (毎月11日発行) ツイートする
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編集 寺坂直毅 岸田浩和 梅澤恵利子
ゴチまぐ 関 裕作
スタッフ 野瀬紗也佳

発行元 :株式会社まぐまぐ
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配送技術:株式会社アットウェア http://www.atware.co.jp/

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