東北まぐ16号 2012年11月 By yurayura70 on 2012年11月11日 in tohokumag 山々が色づき始めた東北。活気ある現地の声を、全編レポートでお届けします【東北まぐ!】 2012/11/11 ※サイトで読む 配信中止はこちらから 夕刻の石巻漁港 (宮城県石巻市) 河原に出来た人垣の中に、湯気を上げる大鍋が見えました。里芋、肉、ネギ、こんにゃくが、おいしそうな音を立ててぐつぐつと踊っています。東北を代表する季節の行事「芋煮会」。鍋を囲むたくさんの赤い頬と、吐く息の白さが冬の到来を告げています。地産地消の食材をおいしくいただき、人々の交流を深める芋煮の文化が、全国から注目を浴びています。東北各地でそれぞれの味が楽しめる本場の芋煮会めぐりなんていかがでしょう? 皆さんが東北に足を運ぶきっかけとなることを願って。東北まぐ第16号をお届けします。 ~亘理名物が大集合「鳥の海ふれあい市場」~ 「はらこ飯」は、地元民のソウルフードだ。 左から「鳥の海ふれあい市場」の高橋真理子店長、菊地一男理事長、佐藤さやかさん。 今年から始まった「はらこ飯弁当」(800円)の販売。昼前に売り切れる日もある。 被災した温泉宿泊施設「わたり温泉鳥の海」。現在は「ふれあい市場」のみ、仮設店舗で営業再開! Information 「鳥の海ふれあい市場」 宮城県亘理町荒浜字築港通り28-2 10:00~17:00 ※土・日・祝日のみ営業 0223-35-2228 「元祖はらこめしスタンプラリー」 亘理町観光協会では、町内の飲食店ではらこ飯を食べ歩くスタンプラリーを実施中。 11月30日(金)まで。 http://www.datenawatari.jp/index.php?id=56 きらきらと輝くイクラに、甘じょっぱく煮付けられたサケの切り身とご飯。一口ほおばると、「故郷に帰って来たんだなあ」とほっとします。亘理町出身者のソウルフード、「はらこ飯」です。 亘理町荒浜にある「鳥の海ふれあい市場」は、2008年に町の農家や漁業者などが集まって、町営の温泉施設「わたり温泉鳥の海」の1階に、産直市場としてオープンしました。近くの港で水揚げされたカレイやカニなどの海産物から、新鮮な野菜、特産のイチゴを使ったお菓子・ワインまで、亘理のものならなんでも揃う。海を眺める露天風呂に入った後は、ふれあい市場で買い物。県内外から年間17万人が訪れる、人気観光スポットでした。その町の人にとって特別な場所を、津波が襲いました。従業員の佐藤さやかさんが、当時の様子を説明してくれました。「屋上から見たら、周りは一面海になっていました。波と流される防風林の松がぶつかって、とにかく建物が揺れるんです。大型船に乗ってるみたい。次の日1階に下りたら水は引いてたけど、もうごちゃごちゃで、いろんな匂いがしましたね」 せっかく亘理に沢山の人を呼び込んだ町の観光名所が無くなってしまう……。市場のあった5階建ての建物のそばには、同じ高さ程のいくつもの瓦礫の山が並びました。「正直、再開出来ないんじゃないかっていうのはあったね。組合員で亡くなった人もいたし、お客さんも来ないんじゃないか。でも荒浜に育った以上、このままじゃいけないと思ったんだ。誰かが先頭切んなきゃ」そう決意したふれあい市場協同組合の菊地一男理事長は、震災から9ヶ月経った去年12月、荒浜漁港の前の仮設店舗で市場の営業を再開させました。 秋晴れの休日に訪れると、市場は買い物客で賑わっていました。人気商品は、今まさに旬を迎えている「はらこ飯」です。阿武隈川口に位置する亘理町は、サケ漁が盛んだった地域。「はらこ飯」は、地元漁民が伊達政宗公に献上しとても気に入られた、という話が伝わっているほど有名な郷土料理です。家庭によって味付けや盛り付け方が違います。ここで作られる「はらこ飯」は、菊地理事長の奥様の指導によるもの。「うちのはらこ飯は、米を炊く時の煮汁(醤油、砂糖、酒など)にサケの頭とかハラス(お腹の周りの身)も入れんの。そんでその身をほぐしてご飯にも混ぜるから、こってりしていい味が出てんだなぁ」と、菊地理事長は自慢げに語ります。御重に入っているような上品な味付けの「はらこ飯」もいいですが、こちらは昔おばあちゃんの家で食べたような懐かしい味。ご飯にサケの身が入っているので、食べ応えもあります。 客足は戻りつつあるものの、営業は土日祝日に限られ売り上げもまだまだの状態。でも菊地理事長は力強く言います。「この町は本当に恵まれてるなあって思うの。はらこ飯もだし、春はホッキ飯に夏はシャコ飯、アナゴ飯。イチゴにリンゴもある。海のものも山のものも全部揃う。だから、必ずまた荒浜に人は戻ってくる」 (平沼敦子/宮城県出身) ギャラリー「日和アートセンター」 アイトピア通りに面した日和アートセンター。石ノ森漫画館まで徒歩3分。 ランドセルに象の造形を施したインパクトのある作品が目を惹き、思わず足を向けたギャラリーがありました。「象は一度見た風景を忘れないと言われています。この作品には”忘れない”というメッセージが込められているんですよ」と説明してくれたのは、石巻の高校で美術講師を務める梶原千恵さん。「こんな時だからこそ、まちの人たちに”美しいもの”や”楽しいもの”に触れてほしい」と話してくれました。(現在、ランドセルを使った展示は終了) ここは、石巻市内の中心部アイトピア通りに今年3月にオープンしたギャラリー「日和アートセンター」です。もともとは楽器店だった場所ですが、震災後空き家物件となっていた為、改修と有効利用を目的に文化芸術交流の拠点として生まれ変わりました。2Fには、アーティストが作品製作の為に滞在できるスペースがあり、国内外のアーティストが石巻を拠点に製作と展示に取り組む活動が始まっています。11月17日からは、石巻出身の彫刻家ちばふみ枝さんによる公開アトリエが始まります。作家が滞在しながら作品制作を行い、その様子を公開します。12月1日から24日は、完成した作品の展示として、個展「くすんだベール」を開催。アートを起点に県外と地元の交流が盛んになって来た石巻。ぜひ、一度訪れてみてはいかがでしょうか。(岸田浩和) カナダ人アーティストによる「忘れない」というメッセージの作品。 展示の説明をしてくれた梶原千恵さんは、地元の高校で美術を教えている。 Information ギャラリー「日和アートセンター」 〒986-0822 宮城県石巻市中央2丁目10-2 水・木休館 11:00~19:00 http://hiyoriartcenter.com/about/ ボランティアツアー「田代ジャパン」 田代さん(学習院大)のヘルメット。「震災前はボランティア未経験だった」という。 前回の捜索ボランティアの様子。作業は、各自のペースで進めることができる。 先月号でご紹介したボランティアツアー「田代ジャパン」。11月23日からの3連休に、年内最後のツアーが実施されます。今回のお手伝い先は、宮城県の南三陸町で活動を行っているDSP災害支援プロジェクトを予定。ボランティアは初めてという方や社会人の参加申し込みも多数集まっているようです。今回の作業は行方不明者の「捜索」で、指定されたエリアに堆積したがれきや砂利などを撤去する内容です。「ボランティア作業を通じて、今現場でおこっている事を自分の目で確かめて頂ければ」と主催の田代さん。いままで被災地に足を運ぶ事が無かった方も、気になった方はぜひ参加して頂ければと話します。東京駅発で、参加費は15000~17000円。(岸田浩和) Information ボランティアツアー「田代ジャパン」 http://tashiro-japan.jimdo.com/ 被災した水産業者が次々と廃業を決める中、老舗缶詰めメーカーが果敢にも会社の再建にのり出した。かろうじて柱と壁の一部が残された倉庫で、残骸に埋もれた商品を掘り起こし、事業復活に希望をつなぐ人々がいる。ふたたび人の行き交う街を目指して、あゆみ始めた被災地のまち。木の屋石巻水産の挑戦を通して、その長いみちのりを追いかけてみる。 大漁まつりのポスターを前に、「お客さん来てくれますかね」と語る木村さん。 新商品の「鮭の中骨」水煮缶。「身が多いので、チャーハンにすると良いですよ」とお客さんの声も。 新工場(宮城県美里町)の骨格が出来上がりつつある。「これからが正念場です」と答える社員。 Information 木の屋石巻水産 直売所:宮城県石巻市吉野町2-1-26 平日9:00~16:00 http://kinoya.co.jp/eccube/ ショートドキュメンタリー「缶闘記」 http://youtu.be/2YSV7-tbx3A 全国有数の水揚げ高を誇る水産の町石巻。例年秋には、港の魚市場を会場に「大漁まつり」が開かれていた。「会場に入りきれないお客さんが外まであふれて、大変でしたよ」と当時の様子を語ってくれたのは、木の屋石巻水産の木村優哉さん。昨年は開催が見送られたが、今秋は会場をサン・ファンパークに移して再開することとなった。一方で、出展する水産会社が、かつての数分の一に減った為、「お客さんが集まってくれたらいいのですが」と不安をのぞかせていた木村さん。 当日は、予想以上の客足で、用意したミンク鯨の赤肉や新商品の鮭の中骨缶詰が飛ぶように売れ、「午後には売るものがなくなっちゃうかもしれませんね」と、顔をほころばせた。 石巻港に隣接する水産加工団地には、木の屋石巻水産をはじめ100社以上の水産加工業者が軒を並べていた。津波の直撃を受け、全ての工場が操業を停止。社員の雇用を継続できなくなり、震災後1年の間に縮小や廃業する企業が相次いだ。現在は、復興支援金のおかげで、水産団地の約4割にあたる企業が再建を目指しているそうだ。ただ、工事に必要な当座の資金を用意出来ずに再建を断念する会社もあるという。東京・経堂の飲食店による支援や、お客さんの応援のおかげで、のれんを下ろすことなく進んできた木の屋石巻水産。協力工場のラインで商品の生産をスタートさせ、「鯨の大和煮」や「さんま」、新商品の「鮭の中骨」の販売を開始している。 宮城県美里町に建設中の新工場の前に立つ社員の松友さん。建物の骨格は完成しつつあり、夕日に照らされた鉄骨がえんじ色に輝いている。「いよいよ、自分たちの工場が再開するのだと実感がわいてきました」と、明るい表情を浮かべる松友さん。ゆっくりと工場の全景を見わたしながら、手に持ったカメラで工場の様子を写真に収めていく。 震災後の1年8か月を振り返り「いろいろなことがあったけど、実際はスタート地点に戻るめどが立っただけ。これからが正念場ですよ」と表情を引き締めた。「被災地に対する世間の関心が薄れてきているのは事実です。“被災企業の商品”というだけで、どんどん売れる状況は今後期待できないですから」と分析する松友さんは、「缶詰会社として、やるべきことをやるだけです」と言葉を結んだ。(岸田浩和) 東北からの“お便り”大募集! 毎月、東北のレポートお届けしている「東北まぐ!」。 今回から、東北にお住いのみなさまや、現地へ足を運んだ読者のみなさまからのお便りを募集したいと思います。第1回目のテーマは「わたしの好きな東北の味」。地元読者が愛するソウルフード、看板娘や名物親父が切り盛りするお店の人気メニュー、旅先で出会った忘れられない味など。どしどしご応募ください! 送信の際は、以下の専用アドレスへ、タイトルを「わたしの好きな東北の味」として投稿してください。字数は200字以内、写真を添付する場合は2枚以内で1M程度を上限にお願い致します。お店の名前やメニューは正式な名称でご記載ください。お寄せいただいたお便りの一部は、来月の誌面でご紹介したり、時には現地へ取材にお伺いするかもしれません。応募の際は、誌面で紹介される可能性があるとひとことお伝えくださいますようお願いします。 おたよりはこちらまで クッキングまぐ!編集部イチオシの理由は? 良質のかきだけを厳選し、そのままパックした一品。 今回ご紹介するのは宮城県の特産品、牡蠣の詰め合わせセットです。 昨年は震災の影響により宮城県産牡蠣の出荷ができませんでしたが、今年は出荷可能となり、復活。宮城県産牡蠣のむき身を届けられることになりました。 編集部では全てそのまま食べてみました。 まず、「蒸しかき」から。レトルトパウチを開けるとすぐに心地よい磯の香りが広がってゆきます。 ふっくらと柔らかく、噛めば噛むほど、牡蠣独特の旨味を味わうことができます。 「炙りかき」はほのかな香ばしさを感じることができるのが特徴。牡蠣のコクもしっかりとありますので満足度は高いですね。 「かきの吟燻仕込み」は石巻産の牡蠣を桜のチップで燻した一品。 素材本来の味わいがギュッと凝縮したような感じで、お酒のおつまみとして食べても非常に合います。 もちろんそのまま食べても美味しいのですが、パスタやサラダなどの料理に使ってもマッチするでしょう。 秋から冬にかけて旬を迎える牡蠣、是非一度お試し下さい。 左から「炙りかき」「蒸しかき」「かきの吟燻仕込み」かき詰合せパック 3000円 Information ご注文はこちら↓ 五光食品オンラインショップ http://goko-h.com/shop/oyster.html 【東北まぐ】 2012/11/11号 (毎月11日発行) まぐまぐ!はオフィシャルメールマガジンをお届けすることによって無料でメールマガジンを配信するシステムを提供しています。 配信中止はこちらから メールアドレスの変更はこちらから ご意見&ご感想はこちらから 編集 :寺坂直毅 岸田浩和 梅澤恵利子 クッキングまぐ! :関 裕作 スタッフ :野瀬紗也佳 表題写真 :岸田浩和 発行元 :株式会社まぐまぐ 広告掲載をご検討の方はコチラよりお問合せください。 配送技術 :株式会社アットウェア 「まぐまぐ」は株式会社まぐまぐの登録商標です 株式会社まぐまぐは、プライバシーマーク認定企業です 【東北まぐは、転載、複写、大歓迎です。】 関連記事 東北まぐ17号 2012年12月 元祖はらこめしスタンプラリー, 日和アートセンター, 木の屋石巻水産, 東北, 田代ジャパン, 鳥の海ふれあい市場