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東北まぐ28号 2013年11月

牡鹿の手仕事ブランドOCICA、起業家輩出の起点に!挑戦するいわきの飲食店街「夜明け市場」、牡鹿シャルソン、石巻で子供たちが町遊び就業体験、クラウドファンディングで学校を作る!雄勝、仙台牛カレー他【東北まぐ!】

2013/11/11 ※サイトで読む 配信中止はこちらから
東北まぐ
福島県いわき市
はじめに
 取材後に入った飲食店で、地元の人たちと話す機会がありました。
 運送会社に勤めるお兄ちゃん、工務店のおっちゃん、学習塾を経営するお父さんが、それぞれの”いま”を話してくれる。
 「おっきい堤防作ったら砂浜が無くなるらしいけど本当に良いのか」「商売をもう一回始めたいけど、資金を借りるのが難しい」「浪江の家に帰りたいけど、放射能が心配で子供は戻したくない。
 ホントは一緒に暮らしたいけどな」。彼らは口を揃えて言う。「俺たちだけで手に負えないこと、わかんねえ事がいっぱいある。
 さぁ、どうしようって、みんなで一緒に考えて欲しい時もある」
 と。グラスを持ったほろ酔いの3人が、笑顔で見送ってくれました「今度は友達を連れて遊びに来たらいい。その時はおいしい日本酒をごちそうするよ!」

 みなさんが東北に足を運ぶきっかけとなる事を願って。東北まぐ第28号をおとどけします。

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行ってきました東北
再出発、そして挑戦の場として!起業家輩出の起点となる飲食店街「夜明け市場」
行ってきました東北
夜明け市場の起業家支援プロジェクトが、グッドデザイン賞を受賞。盾を持つのは、代表の鈴木賢治さん
 
 昭和のスナック街の雰囲気が残る、JRいわき駅前の飲食店街。日本の高度成長と共に発展したこの盛り場は、わずか50m足らずの路地に30軒以上の飲み屋が軒を連ね、白銀小路という愛称で親しまれていました。 震災直後には僅か数店舗のテナントが営業するだけの閑散とした状態でしたが、現在は「夜明け市場」と名前を変え、ここ2年で急速に活気を取り戻しつつあります。 11月最初の週末に訪れると、路地の両サイドには提灯の明かりがともり、フラメンコやちんどんの賑やかな音色と人々の歓声が交わる盛況ぶりでした。
 震災ののち、故郷のいわきを盛り上げて行こうと立ち上がった2人の若い起業家と、日本全国から集まった有志が、飲食店を起点に東北再興のシンボルとなるようなプロジェクトを目指して、ここいわきで奮闘しています。
 2011年初頭、東京でイベント企画会社を運営していた鈴木賢治さんは、「地元福島の食を全国に伝えたい」と考え、キッチンを備え付けた移動販売車両(キッチンカー)を使った飲食ビジネスの準備を進めていました。東京に店舗を借り最後にキッチンカーの営業許可を待つだけとなった2011年の3月に東日本大震災が発生。 当初の事業計画にも狂いが生じました。鈴木さんはすぐに地元のいわきで建築士を営む松本丈さんに連絡を取り、 炊き出しの支援を準備して現地に向かいました。 現地の活動を通じ、あらためて地震と津波に加え、原発事故の影響を受けた福島沿岸部の甚大な被害を眼の当りにし、長期的な支援が必要になる事を実感しました。

 
 地震や津波で店舗を失ったいわきの飲食店主や、原発事故で20km圏内からの避難を余儀なくされ人々が呆然と立ち尽くす姿を見た鈴木さんは、地元の人たちが経済的な自立を目指して再挑戦出来る場所を作ろうと考えるようになりました。 「実現する為には、取っ掛かりのハードルを下げることと情報発信を続ける事が大切」と考えた鈴木さんらは、震災1ヶ月後の4月中旬に、早くも「被災した飲食店主が出店できる場所を立ち上げ、復興の拠点とする構想」を対外的に発表します。 「場所も決まっておらず、実際はなに一つ具体的な話しが出来る状況ではありませんでした」と苦笑する鈴木さんですが、これがきっかけとなり、場所探しに難航しながらもいわき駅前のスナック街をまるまる借りる事が出来ました。同年11月のオープン時には、開店準備が間に合わず実際に営業できた店舗が2つしかありませんでした。 今だから笑えますがと言う松本さんは、グランドオープンと銘打った手前、訪れた取材陣の撮影に応える為「空き店舗の鉄板に火を入れて、僕自身がもやしを炒めてその場を乗り切った」というエピソードを教えてくれました。

 翌夏には、ビアガーデンと称して各店舗が路地に机を出してオープンスペースで飲食を楽しむ企画で好評を得て、転機を迎えます。「県外のお客さんと地元の人たちが、 ビールジョッキを片手に地元の新鮮な野菜をつまみに交流する理想的な環境が生まれて大盛況だった」といいます。口コミでも噂が広がり、いわきのあたらしいランドマークとして認知が広がりました。 飲食店としてもようやく黒字化してきたそうです。

 鈴木さんは、決して明けない夜はないという願いを込めて、「夜明け市場」をいう名を付けました。「報道 を見ていると福島のシリアスなニュースばかりが眼につきますが、実際のいわきはまだまだビジネスとしても余白の部分が多く、 新しい可能性が無数にある」といいます。

 地元の飲食店オーナーが、震災後の再出発の場所として入居したり、UターンやIターンで新しい挑戦を始める方が出店するなど、さまざまな思いを持った起業家たちが「夜明け市場」に集って、11の店舗が営業しています。
 こうした環境を生かして2013年の7月には、二階の空きスペースにコワーキングスペースをオープンしました。
 いわきで新しい事業に取り組みたい方や、起業間もない人たちがスタートアップの拠点として利用してもらえるようにとの考えです。運営母体としてNPO法人TATAKIAGE Japanをスタート。「食」をキーワードに、地元コミュニティーと県外の人材を繋ぐハブの役目を果たすなど、あたらしい展開へと広がっています。

「昭和の長屋のような人間的なつながりで、地元の方と県外の人たちが連携して事業に取り組める理想的な環境になって来た」と話す鈴木さん。願う未来を、自分たちの手で実現させるためにはどうしたら良いのか?と自問しながら、たくさんの人たちと共に挑戦して行きたいと話します。(岸田浩和)



 
行ってきました東北
古くから続くスナック街の雰囲気を残しつつ、起業家輩出の起点として機能する飲食店街に変貌を遂げた
 
行ってきました東北
オープン2周年を祝うイベントでは、地産の農作物を販売するマルシェが出展し、賑やかなちんどんやの演奏も。事務局の鶴巻さん(左)も、素敵な衣装でお出迎え。
 
行ってきました東北
2階に開設したコワーキングスペースでは、いわき市長を迎えて起業支援についてのディスカッションが行われた。
 
 
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Information
夜明け市場
http://www.touhoku-yoake.jp/
・Facebookページ
https://www.facebook.com/yoake1


東北マップ
 
行ってきました東北
OCICA(オシカ)、手仕事が伝えるその土地の物語(後半)
行ってきました東北
研磨作業中の豊島百合子さん
 
 輪切りにした鹿の角を、紙ヤスリで丁寧に磨く牧浜のお母さんたち。作業場となっている牡鹿半島の牧浜集会所には、しゃかしゃかとリズミカルな音が響いています。この日は4人のお母さんたちが作業場にあつまり、鹿角と魚網を使ったネックレスやピアスの製造に励んでいます。 印刷されたタグを切り、地元の米袋を使ったパッケージに製品を入れるのも、全てが手仕事で進んで行きます。研磨が終わった鹿角を手に取り、表面についた削り粉をそっと指先で拭うと、なめらかで優しいミルク色の素地が現れました。

 牡鹿半島には、漁業を産業の基盤とする集落が点在しています。この地域の人々は震災による津波被害で、家屋と港湾や漁業のための設備を同時に失いました。また、仮設住宅への入居や移転を余儀なくされた方も多く、古くから続く地域コミュニティーが崩壊しています。住人には高齢の方が多く、生活の為の職と地域の人々の繋がりを再生する事が大きな課題となっています。

 一般社団法人つむぎやでは、地域に眠る未活用の天然資源である鹿の角や魚網用の糸を使って、地元の人々がモノ作りに継続的に従事出来る仕組みづくりに取り組んでいます。一過性のブームではなく、手に取った人が”欲しい”と思える製品をつくる為に、外部のデザイン事務所と連携して徹底したデザインワークを行っています。

 この日、研磨作業を行っていた豊島百合子さん(74)は、震災で自宅が損傷したものの、修復出来たため、仮設住宅には入居していません。17年前にご主人をなくして以来、牧浜に一人で暮らしています。かつては「カキ剥きの作業なんかで、浜の人と一緒に毎日仕事をしていたから、とくに不安はなかった」という百合子さんですが、「震災後は、みんな仮設や遠方に引っ越して、ご近所の付き合いも急に無くなってしまった」と言います。 「やっぱり、震災の疲れが出たんだろうね」今年の春に心臓を患い、長期入院を経験しました。この時病床で横になりながら無性に牧浜が恋しくなった百合子さんは「早く元気になって、作業にもどらなきゃ」と考えると、居ても立ってもおられなくなったそうです。医師も驚くスピードで回復し、こうして作業にも復帰出来ました。作業が終わると「お茶っこ」の時間が始まります。茶菓子を置いたちゃぶ台を囲んで、お母さんたちが世間話をはじめます。 自宅を失い、いまは他の地区に引っ越したという牧浜のお母さんたちも、週二回の作業とお茶っこの時間を楽しみに、ここに戻ってくるのだと話してくれました。

 検品の終わった製品をパッケージに入れる際、豊島さんが製品のタグにはんこを押しています。「つくった人が、 自分の屋号のはんこを1つ1つ押しているんですよ」とパッケージを見せてくれました。この地に生きる思いを、製品にそっと添えるように、 丁寧に封をしていきます。浜のお母さんたちの、あたたかい手によって命をふき込まれた鹿角のピアスとネックレスが、牡鹿半島の小さな漁村から世界中のお客さんの元へと旅立って行きます。(岸田浩和)

前編「OCICA(オシカ)、手仕事がつたえる、その土地の物語」はこちら
 
行ってきました東北
鹿角に糸鋸を使って切り込みを入れる。手慣れた手つきは職人そのもの。
 
行ってきました東北
台紙の右下には、作業者を表す屋号のはんこ(”ハ”の文字)が押されている。
 
行ってきました東北
作業場はお母さんたち心の拠り所。
 
行ってきました東北
パッケージの台紙や地元の米袋を使った包装も、全てお母さんの手仕事。
 
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Information
・OCICA
http://www.ocica.jp

・一般社団法人つむぎや
https://www.facebook.com/TUMUGIYA


東北マップ
 
東北だより
晩秋の石巻で盛り上がる、参加体験型プロジェクト
東北だより
ソーシャルマラソンの給○ポイントで、穴子を手掴み。
 
 東京よりも少し早く秋が深まってきた石巻。早くも灯油ストーブが活躍するほど肌寒くなってきました。今月は秋晴れの空の下、外で思いっきり楽しむイベントが数多くありました。

 牡鹿半島で初開催された「牡鹿シャルソン」は、ご当地ソーシャルマラソン(=シャルソン)の石巻版。スタートもゴールもなく、設定されたコース区間での「体験」を競いました。マラソンとは言いながらも走っても、歩いても、車で回ってもOK。ところどころに設定されている給水ポイントならぬ「給◯ポイント」では穴子のつかみどりや、クジラのおにぎり、語り部など様々な体験が用意されました。地元の人々が給◯ポイントに立ち、東京など県外から訪れた参加者たちは積極的に地元の産品を手にしたり交流出来る仕掛けになっています。ストイックなスポーツイベントだけでなく、こんな楽しみ方も増えていくといいですよね。
(石巻・牡鹿半島の魅力を発見する新しい観光「牡鹿シャルソン」)

 
 今年で2回目となる子どもたちが主役のまちなかイベント「子どものまち・いしのまき」も中央の商店街アイトピア通りを歩行者天国にして、約1500人の子どもたちで盛り上がりました。ドイツ・ミュンヘンが発祥の「ミニシティ」をモデルに、子どもたちが様々な職業を街じゅうで体験できるこのイベントは「職業案内所」で仕事が足りなくなるほど大人気です。運営側のスタッフにも高校生が企画段階から入るなど、頑張っていました。
(「子どものまち・いしのまき」-子どもたち1500人が就業体験で「まち遊び」)

 石巻市内北部の雄勝町でも自然を活かした面白い取り組みが始まっています。2002年に閉校した築90年の旧・桑浜小学校を改修して雄勝の自然の中で学べる学校をつくろうとしています。地元の人と、雄勝で教育支援に取り組むNPOが協働して面白い場づくりをしています。シューティングスターというクラウドファンディングで1年間かけて資金を調達しています。隈研吾さんやスタンフォード大学など、世界的な建築家が改修のアイディアを出したりと、小さい町から発信するビッグプロジェクトです。機会があったらぜひ訪れてみてほしい場所のひとつです。 (石巻・雄勝町の学校再生プロジェクト、クラウドファンディングで資金調達)  新米の時期も迎え、秋の味覚も目白押しの石巻にぜひ遊びに来て下さい。(小泉瑛一/石巻経済新聞)

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東北だより
子供たち1500人が、石巻の街中で就業体験。
 
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クラウドファウンディングで学校を立ち上げるプロジェクトが雄勝でスタート。
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Information
石巻経済新聞
http://ishinomaki.keizai.biz/

一般社団法人ISHINOMAKI 2.0
http://ishinomaki2.com/v2/aboutv2/

 
今月のお取り寄せ
 
今月のお取り寄せ
老舗の味を期待させる高級感のあるパッケージです。

今月のお取り寄せ
ルーはたっぷり200g。これならば男性でも満足できるでしょう。
  ゴチまぐ!編集部
イチオシの理由は?

 仙台というと有名なのが牛タンですよね。
 今回は、全国屈指の黒毛和牛、仙台牛の牛タンをふんだんに使用した贅沢なカレーをご紹介します。

 なんでも仙台にある昭和四十三年創業の老舗ステーキ店「すてーきはうす伊勢屋」の人気メニューでもあるカレーをベースに作られたということ。編集部でも早速取り寄せて試食してみました。

 まず驚いたのが入っている牛タンのサイズ。2~3cm角にカットされたゴロッとした大きさのものが入っており、食感も十分に楽しめます。

 ルーは濃厚でビーフの旨みがしっかりと出た欧風テイスト。それでいてスパイシーさも感じられる絶妙なバランスが実に見事です。

 200gで1000円とレトルトカレーにしては高価ですが、それに見合う価値があります。カレー好きならばぜひ食べて欲しいオススメの逸品です。ぜひお試しください。

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お問い合わせ
・すてーきはうす伊勢屋
http://www.iseyanet.jp/shopping/
 
 
【東北まぐ】 2013/11/11号 (毎月11日発行)
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編集 :岸田浩和
取材 :岸田浩和、関裕作
製作 :本村彰英
表題写真 :岸田浩和
 
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